思考の海で泳ぐ

読書日記や日々の考えたことを文字として産み落としています。

自分がないという悩み

わたしはいわゆる「さとり世代」に当たるのだけれど、その悟りというのはわたし自身を言い得ているようで少しずれていると感じる。

さとり世代とは一般的に「欲がない」と言われている世代を指すそうだ。けど欲がないわけじゃない。やりたいことはあるんだけれど、それが何か分からない。

 

いま若者を中心に「何がしたいか分からない」「やりたいことがない」という人が増えているらしい。書籍『仕事なんて生きがいにするな』によると、こういう人たちはそもそも「何が好きで嫌いなのか」ということをあまり考えたことがなく、その背景には小さい頃から親にいろんなものを決められて”受動的”に育ってきたことがあるそうだ。

わたしも、強制はされずとも、親やまわりの期待に応えようと一生懸命みんなが与える「良い子」を演じるばかりに、「自分」の発達を蔑ろにして生きてきてしまったな、と振り返って気づく。

しかも、蔑ろにするだけにとどまらず、良い子を演じることが得意になりすぎて、もはや自分と向き合うことに難しさを感じるレベルに悪化していた。自分とかよく分からないものと格闘するよりも、誰かの期待に答えている方が100倍楽だ。「自分」から逃げるように、日常の中に溢れる自分への小さな期待を一生懸命嗅ぎ分けて、「誰かに見せるための自分」をどんどん膨らませていた。

 

そんなんだから、「好きなもの」どころか「好きなものの探し方」すら分からない。17歳、幸運なことに大学受験に失敗して「自分」と向き合うチャンスを手に入れたんだけど、当時のわたしは「からっぽの自分」を目の前にして困り果ててしまった。

せっかく自由を手に入れて何でもできる自分になったのに、何がしたいか分からない。次へ進むための「自分」がない。

道も標識も何もない、途方もなく真っ白な空間でひとりぼっち、完全に迷子になった。

 

「本当のやりたいことはどこかに転がっているはず」と、よくある「本当の自分探し」の流れで「海外」という刺激の海に飛び込んだ。けど、結局「自分」と向き合う気がないと「からっぽの自分」は満たされないんだよね。

 

***

 

「自分と向き合う」というのは「頭」で考えることを捨てて「心」 で感じ取ることに重きをおくとわかりやすい。 

頭でっかちな私たちは「これをしたら何が得られるのだろうか?」「結果を出すためにもっと簡単な方法はないのだろうか?」となんでも「頭」で勘定をしてしまう。

ビジネスの世界ならばそれもいいのかもしれないけれど「好きなことを見つけたい」っという内面の悩みの前では、「頭」はときに邪魔者になる。

 

「好き」とか「楽しい」っていう感情は、頭の中で「これこれこうだから、好き、楽しい」と論理的に”整合”されるのではなく、自分の奥底から”湧き出してくる”もの。それを感じ取ることが「心」の働きであり、湧き出す感情なしに「頭」だけで判断した「やりたいこと」の多くは続かず、途中で「これ違ったかも?」って悩みはじめる。とりあえず私はそうだった。

そもそも最初は「心」で何かを感じ取るってことの概念が分からなかったし、仕組みを理解した後も、「心」で感じ取ることがすごく苦手だから、得意な「頭」でなんとかしようと、自己啓発書を読んだり、スキルをつけて現実逃避したりして、なんとか自分の外に答えを探そうとしていた。もちろん、そんなのはその場しのぎで「からっぽ」を埋める”代用品”にしかならなかったのだけど。 

自分のやりたいことを見つけるには自分と向き合うしかない。自分がどういうときに楽しいのか、どういうときに楽しくないのか、苦手でも手間がかかっても「心」で感じ取っていくしか解決方法が見つからない。なんども失敗を繰り返して、どうやら「頭」でやるには限界があるらしいと確信していった。

 

結局、自分とちゃんと向き合おうと腰を据えたのは1年前。海外に出て5年目のことだった。最初はやっぱり「頭」で勘定することをやめれなくて、「気持ちを大事にしよう」と思いつつ、その行動にすぐに結果が得られることを期待したりして、たくさんモヤモヤした。

けれど、1年間もがきつづけたら、やっと「これがやりたい」と心から思えるものの端っこを捕まえれた。まだ具体的に現わせることじゃないけれど、体験を通して「楽しいこと」と「楽しくないこと」をリストアップしていったら「やりたいこと」の輪郭がどんどん濃くなっていったかんじ。

同時に「本当の自分探し」もおわりを迎え、「そうだよな、自分ってこうだよな」と納得できるようになってきた。これも答えは外にあるんじゃなくて自分の中にあった。

 

迷子になって、早6年。かなり遠回りになってしまったけれど、やっと光が見えはじめた。 

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